「主人公」

先日一緒に歩いていた、娘がこんなことを言いました。
「あのね、わたし、心の中のお家が
ときどき留守になってしまうことがあるの。
ふわふわと色々なことを考えてしまうんだけど
心の中のお家に誰かが住んだり、お化けが
でちゃうかな」

可愛らしくて思わず笑ってしまったのですが、
これは先日娘が食事中上の空になっているときに
私が大好きな禅語「主人公」の話を娘に聞かせたから。

「主人公」といっても、ドラマや物語の
メインキャストということではありません。

今年3月に人間禅道場での座禅の後に伺った
芳賀幸四郎(如々庵老師) 著 「禅語の茶掛一行物」
「主人公」の話は、伺って以降、私の心の指針になりました。

如々庵老師 は、 吉田兼好の『徒然草』の
第二百三十五段をとりあげ、分かりやすく説明しています。

以下、抜粋。

「兼好はまず、家主が不在で空き家のままにしておくと、
行きずりの人や盗人がみだりに入りこみ、さては狐狸が
棲みつき妖怪変化なども現れるようになると述べ、
心の場合も同様で、「心の主」が留守であると、
あられもない雑念妄想がわがもの顔に心中に湧き起こり、
のさばるものだと説いている。
この指摘はまことに要を得ている、そして兼好が
「心の主」と名付けたもの、それを瑞巌は「主人公」
と呼んでいるのである。」

マルチタスクをこなさなければならない忙しさの中で
ついつい、他のことを考えて、目の前のことが疎かに
なったり、集中できないことがあります。
家族の話を聞きながら、実は適当に相槌を打っている
ことが良くあります。
上の空になったり、心がざわつき落ち着かない時
この主人公を思い出し、「はっ」として
本当の自分、「心の主」はここにいるか、を感じるため
呼吸を整える様になりました。

現代人は「いま、ここ」を忘れて、過去や、近い未来に
ばかり想いを向けている様に感じています。

カウンセリングや転職支援の中でも、近い未来に捉われて
肝心なことを見過ごしている方も多くいらっしゃる様に
感じています。自身の自戒の念も含みますが、
それでは、本末転倒になってしまうのです。

前述の本ではその後、こう続いていきます。

「・・・何を措いても真実の自己をはっきりつかみ、
「主人公」を毅然と確立すること、言葉の本来の
意味での「自覚」を得ることが根本である。
この正しい自覚の上に立たない自主・自由は畢竟
インチキなものにすぎない。」

厳しい言葉ではありますが、まずは、自分の心の
状態を感じる時間をつくり、心の主を自覚すること
で、雑念妄想がのさばることを手放していきたいですね。

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